敷地を読むことから、設計は始まる

DESIGN NOTE / 敷地を読む

都市の狭小地では、同じ坪数でも敷地の向きと周囲の建ち方で、取れる間取りがまったく変わります。この記事では、私たちが設計の前に敷地の何を見ているのかを、実際の施工実績5件の与条件と一緒にご紹介します。

目次

設計は、間取りではなく敷地から始まります

住宅街のなかの更地。前面道路と両隣の建ち方から、設計の条件を読み取る
更地の状態で現地に立ち、光と風と視線の条件を読み取ります。ここで決まることが、設計の半分です。
施工事例「角に開き、二面から光をとる家(デモ)」の施工前

都市の家設計室の設計は、間取りの検討からではなく、敷地の観察から始まります。太陽がどう動き、隣家の窓がどこにあり、風がどこから抜けるのか。

図面に現れないその敷地固有の条件を読み取ることが、設計の半分を決めると私たちは考えています。狭小地や変形地ほど与条件は複雑になりますが、複雑であるほど解くべき問いは明確になります。

敷地で、最初に読む四つのこと

初回のご相談をいただいたら、私たちはまず現地に立ちます。

角地に建つ住まいの石張りアプローチ。二方向の道路との関係から玄関の位置を決めた
二方向の道路との関係から、玄関までの数歩をどう取るかが決まります。
施工事例「角に開き、二面から光をとる家(デモ)」より

図面と登記の数字だけでは、その敷地で気持ちよく暮らせるかどうかは決まらないからです。次の四つは、どの敷地でも必ず確かめています。

  • 太陽の動き。朝と昼と夕方で、光がどの面から入るのか。隣家の高さによって、地上階まで光が届くのか、上階で受けるほうが自然なのかが変わります。
  • 隣家の窓の位置。こちらが窓を開けたときに、向こうの窓と正対しないか。視線が合う位置は、たいてい開けなくなる窓になります。
  • 風の抜け道。入口と出口が対になっていないと、窓の数を増やしても風は通りません。抜ける方向を一組決めてから、開口の位置を決めます。
  • 接道と駐車。前面道路の幅と間口から、駐車を敷地内に収められるか、玄関までのアプローチに何歩とれるかが決まります。1階の使い方はここでほぼ決まります。

読み取った条件が、そのまま形になります

敷地ごとに答えは異なりますが、出発点はいつも同じ、敷地を読むことです。

木とガルバリウムで構成した外観。開口の位置と大きさを絞っている

角地|二方向のどちらから採るか

二方向が道路に接している敷地では、どちらの面から光を採り、どちらを構えとして閉じるかを先に決めます。

角に開き、二面から光をとる家

隣家に面する側に立てた木の縦格子スクリーン。視線を切りながら光と風は通す

正対する面|格子で視線だけを切る

隣家の窓と正対する面は、閉じきるのではなく格子を立てて、視線だけを切り、光と風は通します。

通りに端正に立つ、縦の家

1階に組み込んだビルトインガレージの内部。シャッターを閉めれば通りから見えない土間になる

接道と間口|1階の使い方が決まる

前面道路の幅と間口から、駐車を敷地内に収められるかが決まります。1階の使い方はここでほぼ決まります。

クルマも暮らしも、この敷地の中に

与条件と、選んだ答え

坪数の近い敷地でも、答えが同じにならないことがご覧いただけると思います。

敷地の与条件と、選んだ答え(デモ)
敷地 約16坪
木造3階建て
間口が狭く、通りと隣家に正対する。
→ 3層の縦長プロポーションとして端正に整え、窓は位置と大きさを絞って外からの視線が室内に届かない構えとした。
通りに端正に立つ、縦の家
敷地 約34坪
木造2階建て
道路側に大きく開くと、通りからの視線がそのまま入る。
→ 道路側の開口を抑え、コの字の配置で採光と通風の主役を外周の窓から中庭へ移した。
外に閉じ、内に開く家
敷地 約22坪
木造3階建て
角地で、二方向が道路に接している。
→ 二面の開口を生かして光を取り込み、玄関までの数歩に石張りのアプローチと坪庭を添えた。
角に開き、二面から光をとる家
敷地 約20坪
木造2階建て
庭として取れる余地が小さい。
→ リビングの窓の正面に壁で囲った坪庭を置き、視線を気にせず窓を開け放して過ごせるようにした。
小さな庭を、暮らしの中心に
敷地 約17坪
木造3階建て
駐車を敷地の中で完結させたい。
→ 1階にビルトインガレージを組み込み、LDKを上階へ持ち上げて通りからの視線と音から距離を取った。
クルマも暮らしも、この敷地の中に
玄関前の植栽とアプローチ。道路から玄関までの数歩を設計している
道路から玄関までの数歩を、植栽とアプローチで設計します。
施工事例「外に閉じ、内に開く家(デモ)」より
玄関とガレージが並ぶ建物の角。間口の使い方がそのまま1階の使い方になる
間口の使い方が、そのまま1階の使い方になります。
施工事例「クルマも暮らしも、この敷地の中に(デモ)」より

敷地の読み違いは、間取りでは取り返せません

間取りは後からいくらでも描き直せますが、光と風と視線の条件は描き直しても変わりません。

敷地の読み方を先に間違えると、その後どれだけ丁寧に平面を整えても、住みはじめてから「この窓は結局開けない」という部屋が残ります。

だから私たちは、プランをお出しする前に、敷地から読み取ったことをお施主様と共有します。なぜこの面に大きな窓を取らないのか、なぜ主室を上階に置くのか。

理由を先にお伝えできれば、プランは好みの話ではなく、その敷地でいちばん気持ちよく暮らすための選択として見ていただけます。

コンクリートの壁と木塀で囲った庭。外周を閉じることで内側を開いている
外周を閉じることで、内側をのびやかに開く。敷地の条件から導いた構えです。
施工事例「外に閉じ、内に開く家(デモ)」より
施工実績のページでは、実際にこの考え方を形にした住まいをご覧いただけます。上の表の5件はいずれも、敷地の与条件が先にあって、そこから断面と開口を決めた住まいです。

この記事のポイント

  • 設計は間取りの検討からではなく、敷地の観察から始まります。太陽の動き・隣家の窓の位置・風の抜け方・接道と駐車の四つを必ず確かめます。
  • 狭小地や変形地ほど与条件は複雑になりますが、複雑であるほど解くべき問いは明確になります。
  • 三方を隣家に囲まれた敷地では上から光を落とす断面を、角地では二方向の開口を生かす、というように敷地ごとに答えは異なります。
  • 敷地の読み違いは、間取りを描き直しても取り返せません。だからプランをお出しする前に、読み取った与条件をお施主様と共有しています。

この考え方を形にした住まいは施工実績でご覧いただけます。

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この記事を書いた人

東京都世田谷区を拠点に、2015年から狭小地・変形地の都市型戸建てを設計・施工しています。外に閉じ、内に開く。敷地の制約を採光と断面の設計で読み解いた現場から、面積によらない住み心地の話をお伝えしています。(デモサイト)

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