窓を、開け放して暮らせるように

板塀と植栽で通りからの視線を切りながら、折戸を全開にして室内と庭がつながる開口

DESIGN NOTE / 窓の設計

窓は数ではなく、置き場所で決まります。この記事では、カーテンを閉めたままになる窓がなぜ生まれるのかと、視線を切りながら光と風だけを通すために私たちが採っている三つの手法を、実際の施工実績と一緒にご紹介します。

目次

開け放せる窓は、大きさではなく向きで決まります

中庭に面して大きく開いたLDK。外部からの視線は建物自体が遮るため、庭の緑を眺めながら終日開け放して過ごせる
外周ではなく内側の中庭へ開くと、カーテンを閉めずに過ごせる窓になります。
施工事例「中庭とひと続きのLDK(デモ)」より

都市の住宅地でよく見かける光景があります。大きな窓があるのに、一日中カーテンが閉まったままの家です。

隣家や通りからの視線を気にして、窓が窓としての役割を果たせていない。私たちはこれを、都市の狭小地における最もありふれた「もったいなさ」だと考えています。

カーテンが閉まったままになる窓には、理由があります

閉めたままになる窓には、たいてい二つの事情があります。

コーナーいっぱいに開いた窓から庭の緑が見えるLDK。カーテンは開けたまま
向かいの視線が届かない向きへ開ければ、カーテンは開けたままで済みます。
施工事例「外に閉じ、内に開く家(デモ)」より

ひとつは、こちらの窓と向こうの窓が正対していること。高さも位置も同じ窓が向かい合うと、どちらも開けにくくなります。

もうひとつは、道路からの距離です。歩道と窓の間に一歩ぶんの余白もなければ、通行人の視線は室内へまっすぐ届きます。

どちらも、あとからカーテンやフィルムで手当てすることはできます。けれど、それは窓を半分あきらめた状態です。

開ける前提で置かれていない窓は、住みはじめてから開けられるようにはなりません。だから私たちは、窓の大きさを決める前に、その窓が何に向かって開くのかを先に決めます。

視線を切りながら、光と風は通す ― 三つの手法と実例

手法そのものは特別なものではありません。大事なのは、その敷地でどれを選ぶかです。

芝生の庭へ向かって大きく開いた掃き出し窓。建具を引き込むと室内と庭がひと続きになる

1|内側へ開く

外周ではなく、建物の内側の中庭に向かって大きく開く。外部からの視線は建物自体が遮るため、庭の緑を眺めながら終日開け放して過ごせます。

中庭とひと続きのLDK

隣家との間の細長い空間につくった坪庭。モミジと低木、砕石と飛石で構成している

2|庭を囲う

庭のほうを壁で囲ってしまう。リビングの窓の正面に囲われた坪庭を置けば、視線を気にせず窓を開け放したまま過ごせます。敷地に庭の余地が小さいときの答えです。

小さな庭を、暮らしの中心に

LDK上部の吹抜け。勾配天井の高い位置に設けたハイサイドライトから光が落ちてくる

3|高い位置へ逃がす

横から光を取れないなら、上から落とす。勾配天井の高い位置に設けたハイサイドライトは、隣家の影響を受けにくく、時間を通して安定した明るさが得られます。

角に開き、二面から光をとる家

四つめとして、開口を絞るという選び方もあります。通りと隣家に面する窓は数を増やさずに位置と大きさを厳選し、外からの視線が室内に届かない構えにする。そうすれば、残した窓は開けられる窓になります(通りに端正に立つ、縦の家)。

窓の数ではなく、窓の置き場所

図面上の採光は面積で計算できますが、開けて暮らせるかどうかは面積では測れません。

私たちがご相談の初期に確かめているのは、隣家の窓の位置と、道路からの距離と、その敷地で光がどの面から入るかです。この三つが決まれば、窓をどこに置けばカーテンが要らなくなるかは、おのずと絞られます。

レースのカーテン越しにやわらかい光が回る窓辺
レース越しの光。明るさは入りますが、開けられる窓かどうかは別の話です。
施工事例「通りに端正に立つ、縦の家(デモ)」より
窓からの光が届く対面キッチンとダイニング
キッチンの正面に窓を置くと、手を動かす時間がいちばん明るい場所になります。
施工事例「通りに端正に立つ、縦の家(デモ)」より

窓は多いほうがよい、大きいほうがよい、とは限りません。開けられる窓が一つあるほうが、開けられない窓が三つあるより、暮らしは明るくなります。

実際にこの考え方を採用した施工事例を、施工実績のページでご紹介しています。上でご紹介した住まいは、いずれも窓の置き場所を先に決めてから、大きさを決めています。
大きな窓から光が入る白基調のリビング
置き場所を先に決めた窓は、カーテンを開けたまま暮らせます。
施工事例「通りに端正に立つ、縦の家(デモ)」より

この記事のポイント

  • 大きな窓があっても、一日中カーテンが閉まったままでは窓としての役割を果たせません。
  • 閉めたままになる窓には理由があります。隣家の窓と正対していること、道路との距離が近すぎることの二つが代表的です。
  • 窓の数を減らすのではなく、開口の位置と建物の構えを設計することで、視線は切りながら光と風は通します。
  • 中庭に面して大きく開く、庭のほうを囲う、高い位置へ逃がす、開口を絞る――手法は複数ありますが、目指すのは「カーテンを開けたまま過ごせる住まい」です。
  • 開けられる窓が一つあるほうが、開けられない窓が三つあるより暮らしは明るくなります。窓は数ではなく置き場所で決まります。

この考え方を採用した施工事例を、施工実績のページでご紹介しています。

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この記事を書いた人

東京都世田谷区を拠点に、2015年から狭小地・変形地の都市型戸建てを設計・施工しています。外に閉じ、内に開く。敷地の制約を採光と断面の設計で読み解いた現場から、面積によらない住み心地の話をお伝えしています。(デモサイト)

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